支倉凍砂著『狼と香辛料』 可愛いけれどひと味違うヒロイン像

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

かなり面白い、ツボに入る小説でした。すばらしい。
この作品を支えているのはホロ。彼女?がいなければ決して成立し得ない物語です。ライトノベルというのは、俺が高校生の頃流行っていたコバルトとかの流れだと勝手に理解しているのですが、その要素があるのはホロという神というか狼の精だけであって、それ以外はむしろ歴史小説、それも歴史経済小説といった趣でした。
まぁこのホロという女の子?。かわいいですなぁ(笑)。ただ、可愛さの方向性がちょっと違う。ルイズとも違うしシャナとも違う。当然ハルヒとも違いますね。ナギともマリアさんともハムスターとも雛菊とも違います。
演技と天然の織りなす可愛さなんだよなぁ。


中身は何百年も生きた狼なんだから、何でも知っているんだけれど、現代社会については疎い。そこが面白くてね。それに、主人公のロレンス同様、ずっとひとりぼっちでいたから誰かと一緒にいたいという思いも強くてそこがまたいいですねぇ。
先々週の『ハヤテのごとく!』192話で、ハルさんがホロを演じていたってのがこれでわかったのですが、ホロ自身が演技と天然の間を行ったり来たりしているので原典を先に読んでいたらまた違った感想を持てたかも知れません。あの表現はものの見事にはまっていたんだな。やっとわかった。って勝手に理解しているだけかも知れません(笑)。


さて、私はこの作品を非常に気に入りました。続きも読みます。ぜひ読みたいです。ただ、一つだけ危惧していることがある。
この作品、あまりにも完成度が高すぎるのですよ。「続きが読みたい!」と思わせるよりも「いい小説を読んだな」という感覚の方が強い。『涼宮ハルヒの憂鬱』を読んだ後ほどではないけれど、『灼眼のシャナ』、さらには『ゼロの使い魔』にとどめを刺すような期待感には乏しいのです。
むろんそれなりに伏線も張ってあるし、北への旅がこの後続くんだろうなと言うのもわかる。でもすんなり北に向かうわけではなく商売をするために目的地からはずれるようなことだってするんだろうなと思います。でもなぁ。この余韻に浸りたいという思いの方が強いのですよ。


難しい話なんですよね。難しいというか、えーっと、やっぱり難しいだなぁ。ライトノベルという出版形態がシリーズ物を想定している以上はある程度の分量が見込めるようにしておかなければならないけれど、特に新人さんの場合は最初の話に持てる力のすべてを注ぎ込まなければならないんだろうなぁ。
そんなあなたに「スーパーハイブリッド構造」。どなたか使ってみませんか?って俺が言っちゃいけないな。俺が編み出したわけではない。言葉を思い付いただけ。でも読んでみたいんだもん。自分では書けないから余計に読みたい。