読書感想文 森鴎外著『うたかたの記』

読みづらいよ。確かに読みづらい。短いけれど時間かかる。1時間くらいはかかった。でもさぁ。脚注を頼りに最後まで読んだらね。もうね。これは……。既にこの時代にこういう類型はできていたってことですか、と思いましたよ。
恥を書くかも知れませんが思ったままに感想を書いてみます。


さーて、何から書きますかね。まずは非常に細かいところからにするか。

  • 「玉ふ」

という書き方についてだ。
これが最初わかんなくてさぁ。なんの「玉」かと。なんで「玉」があっちこっちに出てくるのかと。脚注も無いし。んで、途中で気づいた。これは現代仮名遣いで言うところの「たまう」を無理矢理漢字にしただけなんじゃないかと……。そう思って読むと意味が通じてきた。
明治時代に書かれた作品を読むと、こういう今とは違う、今なら「間違え」と見なされるような漢字の使い方がたまに見られます。樋口一葉作品にもありました。
もしかすると、これはわざと何かを狙ってそうしているのかもしれません。




続いて、作品全体の雰囲気についてです。


萌えですね。萌え。異国の美少女との悲劇ですよ。同じ作者による『舞姫』とか『杯』とかと同じ臭いがする。今の時代にそういう絵でアニメにしても面白いんじゃないかと思います。
絵にしやすいように女の子の容姿を克明に描くという手法は、最近読み始めたライトノベルでも多用されていますが、それは別に今の時代に始まった話ではなく、このころからあったんですねぇ。




最後に全体のお話についてです。
なるほどねぇ。脚注を見るとよくわかる。この話は実際にあった事件に対して架空の説明をつけているんですね。いや、これは一時期の推理小説でも多用されたモチーフですよ。作品名挙げないけれどいくつか思い付きます。中にはノンフィクションとして発表されているのもありますが、個人的にこういう話はフィクションとして発表すべきだと思っていますね。




予想外に面白い小説でした。この本にはまだまだ作品が収録されている。またーりと読み進めて感想を書いていこうと思っています。

阿部一族・舞姫 (新潮文庫)

阿部一族・舞姫 (新潮文庫)