読書感想文 宮沢賢治著『注文の多い料理店』



注文の多い料理店』。
この、短い物語はあらすじだけはよく知っていた。逆に、おそらくは子供の頃1度や2度3度は読んでいるはずなのだがあらすじしか覚えていなかった。


この話を極端に単純化すると、「狩られるもの」と「狩るもの」、言い方を変えると「強者」と「弱者」が逆転する様子が描かれていると言えよう。


獲物を狩ることを目的に山を歩いていたけれど目的を達成することができずにおなかをすかせた狩人が入った料理店「山猫軒」。その店は非常に注文が多い店だった。最初狩人は流行っている店である、有名な人が来る店であると誤解をしていたのだが……




このモチーフはこの物語がオリジナルなのであろうか?小説や漫画でもよく使われている。それらの作品のそもそものベースが『注文の多い料理店』なのかはわからないが、読んだ人に一種のトラウマを植え付けるような強烈な設定である。そこから派生した作品よりも強烈である。


その理由の一つは、前に書いた「強者」と「弱者」が逆転する様子が描かれていることにあるのではなかろうか?いい気になっている主人公たちがへこまされる、そこに一種の爽快感を感じつつも本能的な恐怖を読者は感じるのではないだろうか。私はそう感じた。
もう一つ理由がある。それは、犬と猟師である。
料理店に入る前の狩人2人にとっては、犬も猟師も「道具」でしかなかったように読みとれる。その「道具」に結果的に助けられることになった。つまり、「使う側」と「使われる側」の立場が逆転する様も描かれているのである。


非常に短い物語であり、だれでも簡単に読める物語でもある。
しかし、それだけに、人の心の奥に入り込み、ふとした時にそのモチーフを思い出してしまうような力がある作品なのでは無かろうか、私はそう感じた。




以下、余談。


このモチーフを使っている話は他にもたくさんあると思うのですが、いまふと思い付くのは『うる星やつら』の海辺の話ですね。女の子たちがお風呂に入ろうとしたらこの話と同じ展開になって悲鳴みたいな(笑)。あの漫画の女の子はあんな感じなので、返り討ちにあってしまいますけれどね。


カンバニズムとは違い、種族間の上下関係が変わる話という印象があるので、広い意味で言うと『新世紀エヴァンゲリオン』とか『絶句…‥』とかも似たようなモチーフなのかも知れませんね。


お世辞ではなく、今日読んでみて俺も強烈な衝撃を受けました。ただ単に表面上怖いって話じゃないんですよね。もちろん上っ面だけ面白いって話でもない。本能に直接訴えかけてくるような話ですねぇ。