戦争 2.0

有史以来人類は戦争を繰り返してきました。現代社会では戦争というくくりではなくテロと呼ばれることもあります。個人同士の争いから狭い地域での小競り合い、国と国との戦い、さらには世界を2分する勢力の覇権争いまで規模はさまざまですが戦争を繰り返して来ました。理由もまたさまざま。端から見たら他愛もないとしか思えない個人的な理由から経済的な理由、権力の誇示、そして宗教に根ざすもの。多くの場合お互いに自分が正しいと信じている戦いが繰り返されてきました。
そして、高度にネットワークが発達し情報が溢れかえるようになった現代、その戦争は新たな局面を迎えました。


それを敢えてバズワード的に「戦争 2.0」と呼ぶことを提案します。


今までのほとんどの戦争と違う点はただ1点です。
首謀者が見えない。そもそも「首謀者」がいるのかがわからない。
国と国との戦争の場合は実態はどうであれその国の最高権力者が首謀者とみなされます。陰謀により首謀者を捕らえる、あるいは殺害することによって戦争を終わらせるという考え方は、そのことの是非はともかく極めて自然なものであって、ごく一部の例外を除き明確に負けた方の首謀者は処刑、あるいは失脚をします。戦国時代の日本を思い浮かべればわかりやすいですが、相手の首謀者の首を取るということが戦争のゴールとして設定されています。
しかし、その首謀者が見えない、あるいは存在しない場合はどこがゴールになるのでしょうか?
たとえば相手の組織を壊滅させることがゴールとなるとしましょう。組織壊滅に最も効果的なのはなにか?指揮命令系統の破壊です。ところがその指揮命令系統も首謀者の存在が見えないとわからないです。そもそも指揮命令系統があるのかどうかすらわかりません。その組織に所属すると思われる個人個人がそれぞれの判断で私的な戦いをしているだけのようにも見えます。しかし戦うにはお金が必要。そのお金の流れを止めるという方法で組織を壊滅させることも考えられます。しかしそこでもやはり首謀者というか中心を担う個人なり集団なりがわからないと対処が非常に難しくなります。


敵対する組織はそういう新しいタイプの組織に対しては未だ対応策を見いだせていないように思えます。
情報を分析し相手側の指揮命令系統を探り出そうとしてもなかなか見つからない。今まで多大な労力と資金を投入して築き上げてきた強大な組織で会ってもそういう状況には対応できていないように思えます。そしてもちろんそういう組織を壊滅させる方法もわからない。そういう状況に追い込まれているのではないかと想像しています。


情報が溢れかえる現代、溢れかえるがゆえに本当に必要な情報がよりわかりづらくなっているという側面もあるし、ネットワークで人と人とが比較的たやすくつながれるようになったことで、組織というものが今までの概念から変わってきているという側面もあります。
ネットワークによって我々の生活は確実に変わりました。もちろん光の面はあって、もうこれ無しに生活することは考えられません。しかしそこには当たり前のように陰もあります。
掲示板などでの言い争いのような些細なことから世界を2分するような勢力同士の戦いまで、今までに蓄積してきた方法論では対処できない戦いが今まさに繰り広げられています。