つくばエクスプレスのキセル 【画像あり】

いわゆる「キセル乗車」の語源となっている乗車駅から少しと降車駅から少しの乗車券だけを買って間の料金を払わないという行為は自動改札の入場出場チェックで難しくなっています。
しかも、首都圏では珍しい、線路も改札も他の路線とはつながっていない完全に独立した路線であるつくばエクスプレスキセルという言葉とは無縁と思われがちですがそんなことはありません。


以下、衝撃画像です。









キセルの山。どうみてもキセル。どこを見てもキセル。あいだが抜けているキセル




この画像はつくばエクスプレス浅草駅の壁面です。その駅周辺の文化を象徴するようなデザインを駅に施すのは近日開業する北陸新幹線を例に挙げるまでもなく最近のトレンドです。そして江戸から脈々と続く庶民文化の中心地である浅草、その文化の中にはキセルも含まれています。しかし、鉄道にキセルというのはどう考えても相性が悪い……。


とはいえ、納得もいきます。粋と洒落の街、浅草。清廉潔白ではなく猥雑な雰囲気が街のそこかしこから漂ってくる浅草。それが魅力となっている浅草。浅草なら駅のデザインにあえてキセルを使うのは当然のこと。そう考えることもできます。


話は逸れますが、かつて浅草からさほど遠くないところに住んでいた私は、つくばエクスプレスの駅名をなぜ「浅草六区」あるいは「浅草公園」にしなかったんだろうと思っていました。あのあたりを歩いてみてその理由がわかった気がします。
つくばエクスプレスの浅草駅周辺は、「こここそ浅草である」という気概があるのではないかと思いました。東武、メトロ、都営の浅草駅がある雷門から隅田川にかけてのエリアももちろん浅草ではありますが、本来浅草の中心はつくばエクスプレスの浅草駅周辺であるという思いがあるのではなかろうかと思いました。それが歴史的経緯と照らして正しいかどうかという問題ではなく、そういう気概を持っているのではなかろうかと思いました。
つくばエクスプレス流山市内の駅がよい例ですが、新しくできた路線には今までのイメージを塗り替えるような新しい名前の駅をつけるという考え方が一般的と感じていますが、浅草はあえて「浅草駅」という名前を選択しました。既存の浅草駅とは徒歩数分離れているにもかかわらずです。
もちろん、「浅草」という観光地ブランド名をストレートに駅名に使いたかったというのが一番大きいと思いますがね。


繁華街としての地位は新宿や渋谷池袋と言った新興勢力に及ぶわけもなく、それでも江戸から平成、異なる時代の文化が同居する不思議な雰囲気を醸し出している浅草。巨大な塔と伝統的な文化が風景の中で共存している浅草。
異文化が混じり合うその街では、そこを走る最先端の鉄道路線の壁面に本来鉄道とは相性が悪いはずの「キセル」のデザインを施すのは当然のことなのかもしれません。キセルは鉄道が走るより遙か昔から存在していたのですから。