ヒットの仕掛けその3、その4

【ヒットの“共犯者”に聞く】涼宮ハルヒの場合 III
【ヒットの“共犯者”に聞く】涼宮ハルヒの場合 IV
昨日が水曜日だったので今日まとめて読みました。


読んで思った。やっぱり俺はずれている…。


その3では「飢餓感」というのがキーワードとして上がっています。この日記でもその感覚については触れていました。2006/7/8の記事です。でも、キーワードが一緒なだけで内容は全く違いますね(笑)。日経BPの記事では、アニメで呈示されている謎を解決する手段として原作が売れたという話に流れていますが、俺は、一部の人しかアニメを見られなかったという状況によって、ネット上で評判になったという話にしています。
あまり褒められたもんじゃないですが、千葉だけどチバテレビが映らない家に住んでいるので、Youtubeで見ましたよ。ぶっちゃけYoutubeって言うサイトを初めて認識したのはハルヒ騒ぎでした。それまでは「なんじゃそりゃ」と思ってた。
たぶんね、テレビでぼーっとみていたら何とも思わなかったんですよ。まず見ることもしなかったと思う。俺、アニメ見ないし。ところが見れないとなったらみたくなった。吉野家の牛丼、食えないと思うと食いたくなるのと一緒ですよ。
話を戻すと、アニメの映像にはまだまだ謎は残されています。次作が作られればそれは解消するのかな?
しかし、全然違う話なのに同じキーワードを使ってるってのは面白いな。


続いてその4。アニメ第一話について。
アニメのクオリティについての話として「原作を大事にしたい」から忠実に再現したという流れになっています。前述したようにアニメを見ないしよく知りもしないので、解説サイトを見ても「ふーん」って感じでしたけれど、プロが見てすごいんだからすごいんでしょう。
俺は、全然別の意味で「原作を大事にしたい」から第一話にあれを持ってきたと思っています。2006/7/2の記事 涼宮ハルヒの憂鬱 その危険な世界観2006/8/5の記事、2006/8/26の記事 小説とアニメの幸福な出会いと三回も触れていましたけれど、あれを一話に持ってくると作品世界に入りやすくなるんですよ。


久しぶりにこの表。

レベル5   作中作
レベル4   この小説でえがかれている世界
レベル3   考えていることを現実にする力を持つ少女、涼宮ハルヒの世界
レベル2   考えていることを現実にする力を持つ少女、涼宮ハルヒを想像した何者かがいる世界
レベル1   作者や俺たちが住む現実世界

レベル2ってのは俺特有の解釈だと思いますが、それ以外は素直に読めばこうなっていると思ってもらえるはず。
涼宮ハルヒシリーズの根幹は、この虚構の入れ子構造にあります。で、さらにレベル3とレベル4のA(主に語られる世界)がデッドロックを起こしている。*1それが読者を虚構の世界に引きずり込む原動力になっていると理解しています。
アニメの第一話でレベル5の作中作を持ってきたことには、この表で言うところのレベル4が、もっと低い、普通の虚構であるレベル2にあるのではないかと本能的に誤解させてしまう狙いがあったと見ています。小説だけでもその誤解には陥ります。しかし、作中作を見せることによって、その罠はより強固かつ巧妙になります。レベル3を見せられたとき、読者なり視聴者なりは、自分がいる現実世界が虚構世界に取り込まれたかのような錯覚に陥ります。
自分が生きているこの世界はレベル3にあって、「涼宮ハルヒ」という少女が実際にいるのではないかと。そして彼女がいると言うことはそもそも自分がいるこの世界は「涼宮ハルヒ」という少女によって構築されたレベル4の世界なのではないかと…。
原作の小説自体、読者を虚構に取り込みやすい危険な世界観を持っているのに、それをさらに進めて考え抜いた結果がアニメのあの構成になったのだと思います。だから、ファンが対象のDVDでは時系列順でもOKなんですよ。時系列シャッフルは一見さんを取り込むしかけなんだから。


にしても、目を付けるところが同じで結論も同じなのに、全く別の道筋をたどる事ってあるもんなんだなぁ(笑)。あまりに道筋が違いすぎて、俺が書いたことがあっているのか違っているのか当たらずとも遠からずなのかすらわからねぇ(笑)。
そんなことを思った木曜の午後でした。

*1:レベル4のハルヒがレベル3の能力を内包しているって事です。